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<現場発!>相続対策に「生前贈与」を活用するメリット

相続対策の1つの手法として「生前贈与」があります。贈与税は相続税よりも課税対象に対する税率が高いため、相続対策として贈与を活用するのは得策ではないと思われがちですが、実はメリットがいくつかあります。そのメリットについて、事例を交えながらご紹介します。 

 人生100年時代、相続時には次世代の方も高齢になっており、引き継いだ資産を活用できる期間が短いという状況も起こり得ます。このような状況を回避しつつ次世代への資産承継を円滑に進めるために、検討すべき手法の1つが生前贈与です。 

生前贈与のメリットとデメリット 

 まずは、相続と比較した場合の生前贈与のメリットです。資産運用の観点では、次世代が早期に資産を引き継げるため、その資産を活用できる期間を十分に確保でき、長期的な視点で資産活用を考えることができます。また、対象資産が収益不動産の場合は、次世代の方が賃料収入を直接収受するようになり、より大きな所得分散効果が得られます。承継の観点では、どの資産をどの相続人に託すかをご自身の存命中に明確にし、確実に実行できることも重要でしょう。遺言などを残しても、相続発生後に相続人の間で意見が分かれるなどしてご自身の遺志通りにならないこともあります。生前贈与はそのような事態を防ぐ手段として有効と言えます。なお、贈与する不動産の評価額は、相続税と同様、土地は一般的に路線価、建物は固定資産税評価額をもとに算出されるため、現金に比べて贈与税評価額を圧縮できます。デメリットは、相続より贈与のほうが税率が高いことです。また忘れてはいけないのは、贈与税は「現金」で納めなくてはいけない点です。前もって現金を確保しておく、あるいは納税資金も含めた財産を贈与する、などの準備が必要です。 

贈与税の2つの課税制度 

 贈与税には主に2つの課税制度があります。1つ目の「暦年課税制度」は1年間の贈与財産に課税され、受贈者1人あたり年間110万円までの基礎控除(非課税枠)があります。ただし、相続開始前の7年間に行われた贈与は、遡って相続財産として扱われることに注意が必要です。 

 2つ目の「相続時精算課税制度」は、生前贈与を行った財産を相続発生時に相続財産に合算し、算出される相続税額から支払い済の贈与税の額を引いた金額を納税する仕組みです。この制度は、受贈者1人あたり2500万円の非課税枠と年間110万円までの基礎控があることと税率が一律20%であること、課税対象の評価額が贈与時点のものとなることが特徴です。もっとも、対象者の制限(贈与者は60歳以上の父母または祖父母、受贈者は18歳以上の養子を含む子や孫)があることや「小規模宅地等の特例」が適用できないことは注意点です。 

 なお、一度相続時精算課税制度を選択すると、以降は暦年贈与を適用できません。どちらを選択するかはタイミングや相続財産の規模などを考慮に入れて決める必要があります。 

相続時精算課税制度を活用し区分マンションを贈与 

 次世代への資産承継に生前贈与を活用したケースをご紹介します。 

 N様(70代)は現役の開業医で、法定相続人は3人のお子様です。N様は資産承継時のトラブルを避けるため、保有資産を組み換え、子どもたち3人にほぼ等価の区分マンションを1戸ずつ残すことにしました。ただ、現在70代のN様はご自身の相続発生までに区分マンションの賃料収入が蓄積し、相続税額が上がることを懸念されていました。そこで、当社は税理士と相談してこの区分マンションをお子様たちに生前贈与することをご提案。N様は所得分散効果の高さに着目され、さらに1戸の評価額9000万円に対する税率が暦年贈与より低いこと、2500万円の基礎控除があることから、相続時精算課税制度を選択されました。 

 ここで1つ、注意点がありました。N様はマンション購入に際して一部融資を利用されていましたが、本債務が残ったまま贈与すると不動産は負担付贈与として「時価」による評価となり、相続税評価額の圧縮効果がなくなります。そこで、N様には贈与前に債務を返済していただきました。図表2では、区分マンション3戸の生前贈与において、暦年課税制度もしくは相続時精算課税制度を利用した贈与税にそれぞれ相続税を合算し、最終的な支払い総税額を表しています。 

 生前贈与を行った後の相続財産は自宅(戸建)のみで、相続税額は1440万円と想定します。これに暦年課税制度を選択し一括贈与した場合の税額を合わせると約1億4189万円。暦年課税制度においては持ち分を数回に分けて贈与することもでき、3戸の各持ち分を毎年3000万円分ずつ贈与した時の支払い総税額は約1億760万円です。一方、相続時精算課税制度を選択した時は9648万円です(うち贈与税額3834万円は贈与時に支払い済み)。 

 このように、不動産など一定の評価額となる財産を生前贈与する際には、2500万円の非課税枠があり、課税対象の評価額に関わらず贈与税率が一律20%である相続時精算課税制度を選択することで税額が大幅に変わることがあるのです。 

 なお、生前贈与の実施時期や回数、制度の選択などはその目的や状況に応じた判断が必要です。税理士など専門家にもご相談のうえ、検討されることをお勧めします。 

三井不動産リアルティ株式会社
リテール事業本部 リアルプラン営業一部 銀座サロン 所長

望月 荘太

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