まず司会を務めるレッツの宮田敏雄氏が「インスタイルレジデンス本駒込」(東京都文京区)の概要を説明。「インスタイルレジデンス本駒込」は、住本様のご祖父様が子孫に収益不動産を残してあげたいという想いから、1976年に広い自宅を取り壊し建設したもの。ご祖父様、ご両親と受け継ぎ、住本様も十数年暮らした愛着のある物件です。
続いて、オーナーの住本様が再生前の当該物件の老朽化に関するお悩みを語られました。「築30年を過ぎるころから老朽化が目立ち始め、修繕費がかさみ、入居率も年々下がり、抜本的な対策が必要となってきました」と住本様。とはいえ、建築法規の変更により、建て替えとなると現状の7階建てを3~4階に変更せざるを得ないため、なかなか踏み切れずにいたといいます。
実際、住本様のように老朽化不動産の対応に悩むオーナー様は多くいらっしゃいます。その点についてレッツの笠井雄司氏は「改修では耐震補強ブレースが外観や居住性に影響を与えかねず、建て替えでは現況と同規模の建物が建てられない、工事費高騰で事業性が下がるといった課題があります。資産の組み換えについても、先祖代々引き継いだ土地や建物を手放したくない、売却時の税負担が大きいといったことが障壁となります」と解説します。
多くのオーナーと同じ悩みを抱え、住本様はリファイニング建築を検討。こうして、レッツが全体のコーディネートを行い、青木茂建築工房が設計を手掛け、三井不動産レジデンシャルリースが賃貸企画・管理を担う、インスタイルレジデンス本駒込の再生事業がスタートしたのです。
多角的な検討に基づき最適なプランを提案
リファイニング建築による再生事業のステップは4つです(図表)。ステップ1の「簡易構想」では、資料をもとに建物の状況を把握するとともに、机上において建設当時からの用途地域や日影規制の変更、避難経路の検証など多角的な検討を実施。三井不動産レジデンシャルリースの清水聡氏は「入居者の属性別需給バランスや競合物件の賃料相場などのマーケット調査に基づき、賃料査定を行います」と語ります。
ステップ2の「基本構想」では、「コンクリート調査や耐震診断などを通じて躯体の状況を確認しつつ、法的・構造的・計画的・事業性という4つの項目で検討の精度を高めていきます」と笠井氏。ここで当該物件はリファイニング建築が適用可能という調査・診断結果が得られたことを受け、住本様は事業実施の最終判断をされます。「建物規模を維持できる、耐震性能の強化が図れる、建て替えと比べ工事費が軽減できる、環境負荷を低減できることに加え、三井不動産グループのサポートが得られる点も魅力でした」と住本様。
新築の90%超の賃料設定でほぼ満室に!
いよいよステップ3「設計・施工」が始まりました。設計は、青木茂建築工房が基本設計を行い、三井不動産レジデンシャルリースがブラッシュアップする、二人三脚で進行。「データに基づきファミリー層からDINKs層へとターゲットを再設定し、そこに訴求する間取りへと変更しました。また、住戸の区切りを変更し戸数を増やすことで収益性の向上も図っています」と清水氏。
工事では最初に躯体以外の内装設備を解体撤去し、劣化箇所の補修を行い、さらに耐震補強工事を実施して建物の安全性を確保。また、外観は住本様のアイデアを活かし、グラデーションの美しさが目を引くデザインとしました。こうして建物全体が刷新されたことにより、新築物件の92~ 93%という賃料設定でほぼ満室という人気物件へと再生を果たしたのです。
最後に、住本様は「リファイニング建築は持続可能な社会の実現に寄与するもの。ますますメジャーになって、各地で建物の再生が行われるといいですね」と語ってくださいました。