老朽化不動産対策・もうひとつの視点老朽化不動産対策・もうひとつの視点

【第1回】「相続対策」から見る老朽化不動産【第1回】「相続対策」から見る老朽化不動産

レッツプラザ2020年6月号

賃貸不動産の老朽化対策を検討する際には、不動産経営に関わる様々な要素を同時に捉える複眼的な思考が必要です。
今回は、建物の老朽化とオーナーの高齢化を踏まえて、「相続対策」という“もうひとつの視点”から老朽化不動産対策を考察します。

日本で進む“2つの老い”と遺したくない「負の遺産」

いま、日本の賃貸不動産市場では建物の老朽化と不動産オーナーの高齢化という「2つの老い」が進行しています。この現実が示唆するのは、「所有不動産の老朽化に対処すべきオーナーが、その一方で自らの相続に向けた準備も進めなければならない」という事態にほかなりません。

老朽化した不動産が直面するリスクは様々です(図1参照)。例えば、築40年以上の場合には人命にも関わる耐震性能の不足が考えられます。これは所有者の責任が問われる問題で、その解決には建替えや耐震補強工事など大きな支出を伴いますが、「建替えの建築費と賃料が見合わない」「耐震補強だけでは賃料を上げられない」といった理由から投資回収が困難になってしまう可能性もあるのです。

また、設備が劣化すると面倒で多額の費用がかかる修繕対応が頻繁に必要になりますが、それが耐震補強の時期と重なってしまうと多額の支出の同時発生でキャッシュフローを大きく悪化させます。さらに、市場競争力の低下に伴う賃料の大幅な下落や空室の長期化などで賃料収入が減ってしまい修繕もままならない、といったことにもなりかねません。

このように、老朽化不動産だけでも様々な問題が同時に起こり、検討に多くの時間を要します。しかし、老朽化不動産対策を進めているさなかに、にわかにオーナーご自身の相続問題が浮上するような事態に陥ってしまったら、問題の複雑さと難しさは、もはやその比ではありません。

不動産オーナーにとって、相続対策もまた、老朽化不動産対策と同等に重要な問題です。「分割」「納税」「節税」という異なる観点から破綻なく進めなければならない相続対策の検討とその実行には多くの時間を要します。一方で、相続財産のなかに何も対策を講じていない老朽化不動産が残ってしまったら、それを引き継ぐ相続人にとっては「負の遺産」となってしまい、不動産経営がどこかで破綻する可能性があります。相続人に迷惑をかけず、財産を喜んで引き継いでもらうためにも、老朽化不動産対策と相続対策の検討は、本来切り離せないものなのです。

相続対策という視点から見た老朽化不動産の課題

以上のことから、確かな不動産経営のためには、老朽化不動産対策と同時に相続対策への取り組みが必要となります。相続対策という視点から見た場合の老朽化不動産が抱える課題をまとめたのが図2です。

このように、相続対策を進めるうえで老朽化不動産は様々な課題を抱えています。そして、オーナーが高齢化して相続対策を講じなければならない状況になってしまってからでは、時間や対策の選択肢も限られるため、老朽化不動産対策はより困難なものになってしまうのです。

こうした点に留意したうえで、次に相続対策を考慮した老朽化不動産対策の事例を見てみましょう。

事例

リファイニング建築で一新!「負の遺産」を優良資産へ

A様(75歳)が所有する4階建・計20戸の賃貸マンションは築42年。耐震診断で現行耐震基準を満たしていないことが判明して以来、空室が増え始め、稼働率は50%まで落ち込んでいました。老朽化とともに修繕費も増加する一方で、間取りなどの陳腐化から市場競争力は大きく低下。相続対策を見据えて何か手を打たなければとレッツに相談を寄せられました。

当該地を売却せずにお子様たちに相続させたいと切望していたA様。だからこそ、相続税負担を考えて節税対策の必要性も感じており、建替えなどに伴う借入で資産を圧縮することも考えたと言います。

当該地周辺の賃貸需要が今後も見込めることを確認したうえで、レッツは建替えか改修を検討しました。まず、建替えの場合は建築費の高騰に加え、法令改正で建築当時には無かった日影規制の導入により、現状よりも建物規模を小さくしなければならないことから事業性が大きく損なわれると判断。そこで提案したのが、遵法性と耐震性を確保しながら建物の資産価値を再生する「リファイニング建築」(※1)です。

リファイニング建築は、既存建物の躯体を活かすことで新築の7割程度まで費用を低減でき、工期も建替えに比べ1年ほど短縮できます。また、賃料は新築の9割程度 で、建物規模の維持も可能なことから事業性も十分に担保されます。さらに「検査済 証」を再度取得することもできるため、金融機関からの借入(※2)も可能です。A様はこれらの優位性を評価され、この手法による資産再生を決断されました。

この結果、老朽化不動産対策と相続対策を同時に実現。受け継いできた不動産を手放すことなく、お子様に収益性の高い優良な資産として残すことのできた成功事例となりました。

※1 『リファイニング建築』は株式会社青木茂建築工房の登録商標です。(商標登録第4981412号)
※2 株式会社青木茂建築工房と業務提携をしている金融機関の場合。長期融資を受けられない場合もあります。

至難の同時対応を避け、「いますぐ」検討開始を

確かな資産経営のために不可欠な老朽化不動産対策、そして、大切な資産を次世代に良好なかたちで受け渡していくために必要な相続対策。オーナーにとって最重要ミッションであるこれらの大仕事を、その時になってから、いちどきに対処しようとするのは、あまりにもハイリスクなことだと言わざるをえません。

予期せぬことが起こるのが世の常。老朽化不動産を「負の遺産」にしないための準備を始めるのは、「いつかそのうち」ではなく、「いますぐ」です。そして取るべき手だては、老朽化不動産対策と相続対策の両面から多角的に検討する必要があります。まだいずれの対策も進めていないオーナー様や、すでに着手した対策についてお悩みや不安のあるオーナー様は、各分野のプロフェッショナルが揃うレッツにぜひご相談ください。

※本記事は2020年6月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

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