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理屈がわかれば、もっと贈与はできます!理屈がわかれば、もっと贈与はできます!

レッツプラザ2017年1月号/執筆者:阿藤芳明

もう一度、相続税の計算方法を確認しよう!

相続税も贈与税も累進税率と言って、課税される金額が増えれば増える程、適用される税率も高くなっていきます。それは図表1と2からもおわかりいただけることでしょう。累進税率ということは、生前の贈与によって財産が減れば、当然のことのように相続税の計算は低い税率に向かって変動することになります。前述の相続税の例でも、相続人は40%の税率で相続税の総額が計算されています。

もし、相続財産が7,000万円減った場合、課税される財産は2億円が1億3,000万円になります。そうすると、ここでは相続人がひとりなので基礎控除額の3,600万円を考慮して、図表2から税率が30%になることがおわかりいただけるでしょう。財産が減った場合、決して実効税率の割合で適用される税率が減っていくわけではないのです。何度も言いますが、相続税も贈与税も累進税率となっています。累進税率とは10%から始まって、15%、20%、30%という具合に順次、財産が増えると漸増していく税率構造なのです。前半で速算表と税率のお話をしましたが、相続税や贈与税を計算する際に、速算表では表面的にはひとつの税率しか見えません。しかし、実際には何段階もの税率が適用されているのです。簡便的に“控除額”をあらかじめの計算によって算出し、計算を容易にしているだけなのです。ということは、逆に考えると財産が減った場合には、高い税率分から40%、30%、20%と順次低い税率になっていくわけなのです。

限界税率と実効税率

ちょっと専門的になりますが、数段階に分かれる適用税率のうち、最も高い税率を『限界税率』と言います。財産が減ると、一定の幅はありますが、適用される税率が順次下がっていきます。その際、最も高い限界税率から順次低い税率になっていくので、初めに影響を受ける税率は限界税率なのです。ということは、贈与税の実効税率と相続税の実効税率を比較しても、意味がないということなのです。贈与税については、実際の負担割合を示す実効税率が比較の対象です。しかし、これと比べるべきものは、相続税の実効税率ではなく、限界税率なのではないでしょうか。

ここでもう一度、話を贈与税と相続税の実効税率の比較に戻しましょう。前述のケースで算出した相続税の実効税率である24 3%で考えると、それと同じ実効税率でおこなえる贈与財産の額は1,470万円でした。しかし、実効税率ではなく、実際に機能する限界税率40%を基礎に贈与税を考えると、4,670万円の贈与で贈与税額1,868万円。この贈与の実効税率は40%となり、相続税の限界税率40%と同率。

つまり、1,470万円ではなく4,670万円までの贈与でさえ、生前に贈与をした方が、何もせずに相続税を納めるよりも“お得”になるということなのです。

やるべきことは積極的な贈与!

生前の贈与が効果的であることを、頭ではわかってもなかなか実行できない方も多いと思います。それには色々な理由があるのでしょう。とりわけ生前に現金を贈与すると、子や孫が意味のないことに使ってしまう心配があることも。さりとて子や孫に知らせずに贈与をすれば、単なる名義借りだとして、税務署には相続財産と認定されてしまいます。贈与をする場合の注意点として、必ず贈与をする人(贈与者)ともらう人(受贈者)双方に贈与がおこなわれたことの認識が必要なのです。従って、受贈者に内緒で贈与をおこなうことはできません。

贈与税については、合法的にも各種の特例が用意されています。住宅資金贈与、教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与、贈与税の配偶者控除等々が挙げられますが、その他に必要な都度の生活費や教育費についても非課税で贈与できる部分も多いのです。非課税でおこなえる部分はもちろんのこと、まずはご自身の相続税を試算してみましょう。限界税率がわかればどれだけの贈与が有利なのか、金額的にも納得した上で贈与がおこなえます。いつも申し上げていることですが、亡くなって残すお金は文字どおり“死に金”。生前に贈与して喜んでもらってこそ、“生き金”になるのです。

※本記事は2017年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

阿藤芳明
税理士法人ATO財産相談室 阿藤芳明
税理士。早稲田大学卒。国税専門官として税務調査を経験後、アーンスト&ヤング会計事務所、タクトコンサルティングを経て独立。資産税のスペシャリストとして活躍中。

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