老朽化不動産対策・もうひとつの視点老朽化不動産対策・もうひとつの視点

【第2回】資産再生を成功に導いた共感と信頼【第2回】資産再生を成功に導いた共感と信頼

レッツプラザ2020年10月号

賃貸不動産の老朽化対策を検討する際には、不動産経営に関わる様々な要素を同時に捉える複眼的な思考が必要です。今回は、ある資産再生プロジェクトの実例をもとに、「パートナーシップ」という“もうひとつの視点”から老朽化不動産対策を考察します。

本プロジェクトは、オーナー様を中心に(株)青木茂建築工房や三井不動産レジデンシャルリース(株)、そして、レッツ資産活用部が密に連携し、試行錯誤を重ねながら取り組んだ事例です。ここでは、当事者であるオーナー様にプロジェクトを振り返っていただきながら、ご所有資産への想いやパートナーシップのあり方などについてお話をお聞きしました。
※ 『リファイニング建築』は株式会社青木茂建築工房の登録商標です。(商標登録第4981412号)
【プロジェクト概要】

ご相談者は、ご長男として数年前に賃貸不動産を相続された20代のオーナー様。ご所有物件は東京・目黒区内の1965年築の自宅兼賃貸マンションで、経年に伴う建物・設備の老朽化や、賃貸事業の収益悪化といった課題に直面していました。

 レッツは、業務提携する(株)青木茂建築工房と共に「リファイニング建築」による資産再生プランを提案。オーナー様の賛同を受けて、2019年8月に着工し、今年3月、新耐震基準を満たした「トラスト学芸大学」として生まれ変わりました。

 設備・仕様のグレードや、地域特性と市場ニーズを捉えた商品企画も奏功し、賃料と稼働率の大幅アップを実現。賃貸運営を安心して任せられる三井不動産レジデンシャルリース(株)とのサブリース契約で運営管理の手間からも解放されたオーナー様の新たな資産経営がスタートしています。

トラスト学芸大学(目黒区)

●敷地面積/171.81㎡●延床面積/450.76㎡●規模・構造/地上5階・RC造 ●工事着手/2019年(既存建物:1965年竣工)

お話「トラスト学芸大学」 オーナー様

建物と事業を脅かす課題に対し限られていた解決の選択肢

自宅でもあった以前のマンションは老朽化が深刻で、地震のたびに揺れて不安でしたし、雨漏りにも悩まされていました。そんな状態ですから空室は増える一方で、次の入居者もなかなか決まらない。収益性は大きく下がって、今後の賃貸事業の先行きに不安が募りました。

それに、こうした課題の解決を検討するうえで、対策の選択肢が限られていたことも頭の痛い問題でした。

私と母にとってここは長年住み慣れた便利な土地で、尊敬する曾祖父が建てた思い入れのある建物です。そのため、そもそも売却やほかの資産への組み換えなどは考えていませんでした。当時、相談を持ちかけたいくつかの不動産会社にそんな想いをぶつけると、提案されたのは皆一様に「建替え」でした。さらに詳しく調べてもらうと、私たちのマンションは現行の日影規制に抵触するいわゆる「既存不適格物件」で、建て替える場合には建物規模を縮小しなければならないこともわかりました。しかしそれでは事業性が大きく損なわれてしまいます。

建替えを避けるとなると、残る選択肢は「大規模な建物改修」か「必要最低限の耐震補強工事」しかありません。そこで問題になったのが「検査済証」です。竣工から半世紀以上経過したこの建物の検査済証は探しても見つかりません。そのため金融機関からまとまった額の長期借入を受けられず、大規模改修は資金的に難しくなる。けれど、コストを抑えた単なる耐震補強だけでは、賃貸物件としての競争力回復はあまり見込めない。私たちはそんなジレンマに陥っていたのです。

あらゆる要件をすべて満たした「これしかない!」ベストな手法

そんな時に知った「リファイニング建築」は、私たちにとって「これしかない!」と思えるベストな手法でした。まず、従来の建物を残しながら、構造躯体の軽量化や補強によって現行の耐震基準を満たすことができる。また、建築基準法の緩和措置により、建替えと違って建物規模を維持できる。そして、再生した建物の検査済証を再取得できるため、長期借入をするための大きな問題のひとつがクリアできる。それは、代々受け継いできた建物を残したまま、新しい価値を付加していきたいという私たちの願いを叶えてくれる唯一の選択肢だったのです。

プロジェクトがスタートしてからは、少なくとも月に一度、私たちと青木茂建築工房、三井さんの三者で打ち合わせを重ねました。青木茂建築工房で対応されていた目黒区との協議や建築・法令などに関する専門的で難しい話も、三井さんにそのつどわかりやすく解説してもらえました。それに、現場の進捗状況などもこまめに伝えてくれたので本当に安心でした。必要書類の手配や金融機関への説明など、融資付けについてもしっかりサポートしてもらえてとても心強かったですね。

本プロジェクトにおけるリファイニング建築工事の流れ

尊敬する曾祖父から受け継いだ大切な資産をさらに次の世代へ

竣工したマンションを初めて目にした時は、まるで新築のようでただただ驚き、感動しました。現在は、賃貸運営を安心して任せられるサブリース契約で運営管理の手間から解放され、以前より少し広くなった自宅もとても快適です。自宅は4階ですが、以前はなかったエレベーターも新設されたことで、毎日の暮らしが楽になったと母もとても喜んでいます。

すっかり生まれ変わった建物のなかで、従来の面影を残しているのが階段の一部です。目にするたびに暮らし続けた以前の建物を思い出せると母はうれしそうで、私もここが確かに長年暮らしてきた場所だと実感できて、どこか懐かしい気持ちになれますね。

ちなみに、新しい物件名は「トラスト学芸大学」と私が命名しました。この「トラスト=信頼」という言葉は、最初にこの建物を建てた曾祖父の名前の一文字「信」から取っているんです。このプロジェクトの成功もまた、三井さんや青木茂建築工房との確かな「信頼」が導いてくれたのだと改めて感じています。

若い私の話にも真摯に耳を傾けてくれた青木さん、そして、私たちの想いに根気強く一生懸命応えてくれた三井さんに対しては、「なぜ、ここまでやってくれるんだろう?」と幾度も母と話していました。すべてにおいて満足のいく結果をもたらしてくれたこのパートナーシップには、本当に感謝しかありません。

20代の私にとってはまだ先の話にはなりますが、曾祖父から代々受け継いできたこの建物を、さらに次の世代に確かなかたちで引き継いでもらうために、これからもしっかり頑張っていきたいですね。

担当者コメント
確かな資産承継のためにも早めの老朽化不動産対策を

受け継いできた建物を残したい、というオーナー様の強い想いにプロジェクトチームの皆が共感し、心をひとつにして多くの困難を乗り越えられた個人的にも思い入れのあるプロジェクトとなりました。資産経営と同様に、老朽化不動産対策でも確かなパートナー選びが大切です。特にオーナー様がご高齢の場合、次世代に資産を良い形で確実に残すためにも早めの対策が重要です。
老朽化不動産対策でお困りのオーナー様は、ぜひ私どもレッツにご相談ください。

※本記事は2020年10月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

リファイニング建築を動画でさらにわかりやすく解説します

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