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第14回 がけ・擁壁について第14回 がけ・擁壁について

レッツプラザ2020年1月号/執筆者:神宮 保彦

私たちが住んでいる日本の国土は山や丘陵が多いため、古くから平坦ではない土地が宅地開発の対象とされてきました。
そのときに傾斜地にそのまま家を建てるわけにはいかないので、何らかの宅地造成工事がおこなわれるわけですが、そこにがけや擁壁が作られることになります。今回はがけ・擁壁についてお話しします。

山や丘などを切り開いて宅地造成工事をしていく場合の形状は「段々畑」や「棚田」のようなものをイメージしていただくとわかりやすいでしょう。斜めになっている傾斜地を削ったり、土を盛ったりすることで段々に平らな宅地を作っていきます。段々の境目には「がけ(高低差)」ができるため放っておくと崩れてしまいますが、それを何らかの形で崩れないよう壁状に施工したものが擁壁になります。

ただ、造成工事の際に造った擁壁の強度が不足していれば、地震や大雨などの天災で崩壊し、がけ崩れを起こす可能性が高まることになります。そのため「がけ」や「擁壁」に関して安全対策に関する規定が設けられています。「宅地造成等規制法」や「がけ条例」などがそれにあたります。

「宅地造成等規制法」について

「宅地造成等規制法」は宅地造成工事の規制区域内において一定の宅地造成工事をする場合には都道府県知事の許可を受けなければならないというものです。そのような場所が建築や売買の対象となる場合で、隣接地との間に擁壁等があるときには、その造成工事が許可を受けて正当になされた安全なものかどうかを確認する必要があります。

「がけ条例」について

「がけ等の安全対策に関する規定」は各地方公共団体において一定の基準や安全に関する措置が規定されていますが、その内容は地方公共団体によって多少異なります。例えば東京都では、がけの高さが基準を超える場合、建物を建てる際には、建物をがけの下端からがけの高さの2倍以上離さなければならないとされています(図1参照)。これはがけの上に建物を建てる場合も、がけの下に建物を建てる場合も同様で、仮にがけが崩れても建物に被害が及ぶ可能性が低い場所に建築しなければいけないというものです。

ただし、このがけが堅固な擁壁で施工されており安全性に問題が無いとされれば、この規制は除外されます。

ところが施工時には問題の無い擁壁であっても、風化や経年劣化によってひびや孕(はら)み等が生じ安全と認められないケースや、造成時には適法であった擁壁が現行法規では認められないケースもあります。その場合は当初の原則に従って建物とがけの距離を一定以上離して建てるか、現行法規にあった擁壁を造り直す必要があります。

擁壁がある場合の注意点

擁壁がある場合で特に注意が必要なケースをいくつかあげておきます(図2参照)。
●玉石積みの擁壁
●大谷石を積んだ擁壁
●コンクリートブロック積みの擁壁
●二段擁壁
●ヒビ、割れ、孕みがある
●水抜き穴が無い
これらに該当しそうな場合には事前に建築士等のプロに現場を見て確認してもらってください。プロが現地を目視し、役所でヒアリング調査をすれば概ねの見当はつくはずです。

擁壁の高さや幅にもよっても変わりますが、擁壁を造成する工事には何千万もの高額な費用がかかる場合があるため、建物を建築する場合に工事費が大幅にかさむことがありますし、そのような土地を売買する場合、買った後に大幅なコスト増が生じたり、場合によっては計画していた建物が建てられないという最悪の事態もあり得ます。さらに、買い手がそれによって受けた損害を売り手に請求してくることも考えられます。従って、がけや擁壁がある土地の売買をおこなう場合には、がけについて正しい知識とプロによる調査が必要になるのです。

境界の位置に注意

敷地と敷地の間に擁壁がある場合、通常は高い位置に建物を建てる側が必要な擁壁工事をすることがほとんどですが、境界ががけの上にあるような場合には注意が必要です。?

他人の敷地に擁壁を施工することは難しいため、自分の敷地内を深く掘り下げて工事をするなど、大変難しい工事になる可能性があるのです。したがって、境界ががけの上にあるか下にあるかを事前に確認しておく必要があります。?

最近は台風などの大雨による災害が多くなっています。自身やご家族、隣人の安全を守るため、ご所有されている敷地のがけや擁壁を一度ご確認いただいてはいかがでしょうか?

※本記事は2020年1月号に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

神宮 保彦
三井不動産リアルティ株式会社
関西支店 ソリューション営業部長 神宮 保彦

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