基礎知識

相続税負担を大きく減らす「小規模宅地等の特例」

相続税負担を大きく減らす「小規模宅地等の特例」

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が住んでいた自宅や事業用宅地などが、相続人の生活にも欠かせないものである場合に、その後の生活に過度な負担がかからないよう相続税評価額を大幅に減額する制度です。詳しく見ていきましょう。

 遺産の中に一定の要件を満たす住宅や事業に使われていた宅地などがある場合には、その宅地の評価額の一定割合を減額する特例があります。これを「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」と言います。

 この特例を受けられる人は、相続もしくは遺贈によって宅地などをもらった個人です。

 減額される評価額の割合は、宅地などの利用状況などにより異なりますが、主として次の通りです。なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税による贈与財産についてはこの特例の適用を受けることはできません。

1.特定事業用等宅地等

 特定事業用等宅地等には、特定事業用宅地等及び特定同族会社事業用宅地等があります。
 特定事業用宅地等とは、相続開始直前に被相続人などの事業の用に供されていた宅地などで、一定の要件に該当する親族が相続するものを言います。

 ただし、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業および準事業は含まれません。

 また、特定同族会社事業用宅地等とは、相続開始の直前から相続税の申告期限まで、貸付事業を除く一定の法人の事業の用に供されていた宅地等で、一定の要件に該当する親族が相続するものをいいます。

 上記に該当する宅地等については、400m2までの部分について評価額が80%減額されます。

2.特定居住用宅地等

 相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、一定の要件に該当する被相続人の親族が相続または遺贈により取得したものについては、330m2までの部分について評価額が80%減額されます。

 この特例を受けるためには、以下のいずれかに該当する必要があります。

(1)被相続人が居住していた宅地等を配偶者が取得した場合

(2)被相続人の同居親族が、申告期限まで引き続き被相続人が居住していた宅地等を所有し、かつ、その建物に居住している場合

(3)相続開始直前において配偶者や同居親族がいない場合で、相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者の所有する建物に居住したことがない者が、被相続人の居住していた宅地等を取得し、申告期限までその宅地等を引き続き所有している場合

(4)被相続人の宅地等で、被相続人と生計を一にする親族が居住していたものを、配偶者が取得した場合

(5)被相続人の宅地等で、被相続人と生計を一にする親族が居住していたものを、居住継続親族が申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ居住している場合

 つまり、被相続人の自宅については、配偶者もしくは同居親族か持ち家を所有していない子が相続しなければ、特例は適用されません。

3.貸付事業用宅地等

 被相続人または被相続人と生計を一にする親族の貸付事業の用に供されていた宅地等で、申告期限まで引き続き所有し、貸付事業の用に供している宅地等については、200m2までの部分については、評価額が50%減額されます。

<小規模宅地等の特例の種類と要件>
  要件 限度面積 減額割合
事業(不動産貸付業等を除きます)の用に供されている宅地

・その宅地等を取得した親族が、その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を申告期限までに承継し、かつ、申告期限まで当該事業を営んでいること

・その宅地等をその親族が申告期限まで保有していること

400m2まで 80%
賃貸用に供されている宅地

・その宅地等を取得した親族が被相続人の貸付事業を申告期限までに承継し、申告期限までその宅地等を有し、かつ、その貸付の用に供していること

200m2まで 50%
一定の法人の事業の用に供されている宅地(特定同族会社事業用宅地)

・その法人の事業(不動産貸付業を除きます)の用に供されていた宅地等であること

・相続開始直前において、被相続人及び被相続人の親族の有する株式・出資が50%を超える法人であること

・その宅地を取得した親族が申告期限において、その法人の役員であること

・その宅地等を申告期限まで保有していること

・被相続人がその法人に対し、宅地等又は建物を賃貸借により貸していること

・その法人が申告期限において事業を引き続き行っていること

400m2まで 80%
居住の用に供されている宅地 配偶者が取得すること 330m2まで 80%
被相続人と同居していた親族が取得し、引き続き居住すること

・被相続人に配偶者や同居していた法定相続人がいないこと

・相続開始前3年以内に自己又は配偶者が所有する家屋に居住したことがないこと

・その宅地等をその親族が申告期限まで保有していること

その他一定の場合

※平成22年3月31日以前に開始した相続については、「小規模宅地の特例」の取扱いが異なる場合があります。詳しくは税理士又は税務署におたずねください。

※居住の用に供されている宅地の限度面積について、平成26年12月31日以前に開始した相続については240m2となります。

※上記の宅地が複数ある場合には、限度面積について一定の調整計算が必要になります。詳しくは税理士又は税務署におたずねください。

※本記事は2012年3月に掲載されたもので、その時点の法令等に則って書かれています。

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